患者診て 小説書いて 絵を描いて 歌まで詠んで 大恥じかいて
奥多摩の せせらぎの音 ひとりじめ 山のかおりも またひとりじめ (小説「特効薬」原稿より・編集で削除)
蝉しぐれ だれがだれだか わかるのか (小説「脳内出血」原稿より・編集で削除)
心して 耳をすませば 死者の声 (小説「暗闇・美人内科医南野由利香」より)
炎天下 涼しい顔の 石ぼとけ (2005年)
炎天下 涼しい顔の 石ぼとけ 詠みし夏の日 とにかく懐かし
(2010年、世の終わりのような酷暑を経て))
文明の カスを集めた 大都会
快適さ 求めて着いた 不快感
快適さ 求めた挙げ句が この猛暑 (2010年8月)
山百合の かおりに流れる 時 想う
しば百合の 白きわだちて 香り追う
人ごみの 騒ぎにかえて 村の夏 (2010年5月 奄美にて)
個性的? 結果はまったく 没個性
厚化粧 結果はみごとな 没個性 (2010年5月 大阪にて)
柿食めば 鳴る鐘の音や 法隆寺 渋さに驚き 音も聞こえず
柿食えば 鐘が鳴る鳴る 法隆寺 味わう間もなく 渋柿はき出す
(正岡子規「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」一般人が詠んでも、まず選ばれないだろう。ひねくれ詠者のひねくれ談義)
古池や 蛙とび込む 水の音 昔はいいなあ どこも静かで
古池に 蛙とび込み 音もなし このごろ日照りで 水までとどかず
(松尾芭蕉「古池や 蛙とび込む 水の音」見たまま聞いたままの情景に、静と動を詠み込み、生まれる世界。そこまで読めない私は、
そのまましか詠めない)
松島や ああ松島や 松島や 松島まつしま どこの花魁(おいらん)
(2010年11月。どうか、どなたもお怒りになりませんよう……)
手のひらに この世の空気 重たいか
仁王の手 人世の重み いかほどか
何もない 無を手のひらに のせるのみ
(2010、NHK・BS103、写真に句をつける番組フォト575の中で、仁王の手掌を見て)
大雨の あとに賑やか 蟲の声
岩レンガ 押しのけてまで 真夏草
なめくじや 毎朝土壁 運動会
満月が 落ちてきたるや 池の中
名月を 愛でて夫婦の 会話なし
名月に 見とれて石段 踏み外し
(2007年9月、仲秋の名月に三首)
湯けむりを なぎ倒すかな 山の風
湯けむりに 香をまじえたる 沈丁花
沈丁花 かおりを梳かして 露天の湯
(2007年3月、修善寺温泉にて三首)
亀よ亀 空を見上げる 君の目に 流れる時は いかに映るか
(奈良猿沢の池ほとりにて)
ふるさとは みどりのなかに またみどり あふれるみどり みどりまた燃ゆ
いかにして 生まれいでしか 故郷は 時につくられ 時に消えゆく
花散るや 花また咲くや とこしえに 天にも地にも 花満ち満ちる
冬の陽に 色彩(あざ)やかな 夏を見る
台風の 目に賑やかな 蟲の声
夏の路 わたる蜥蜴の 急ぎ足
足音に 姿あらわす 蜥蜴かな
五月雨に 砂利敷きつめて 音楽祭
(ふるさと奄美大島にて)
秋風の 垣根にひとつ 時計草
光満ち 光あふれて 無雲天
窓の花 こぼれ流れて 地上まで
(大阪にも色の延長線が)
時計塔 切り抜く空は 秋の空 見上げる空は 紺碧の空
沈丁花 誰がためにとて 咲き香り 誰がためにとて 青く輝く
秋の夜 音符と光が たわむれて 通りすがりの 犬も立ち寄る
梅雨のあと 夜明けを告ぐる 蝉時雨
雨の中 ふりそそぎおる 蝉時雨
梅雨もどり ふりそそぎおる 蝉時雨
蝉時雨 遠い夏の日 雪清閑(しじま)
蝉時雨 誰が誰だか わかるのか
春の陽に 野辺にくつろぐ 石ぼとけ
こほろぎの 仏の頭に しがみつき
のどかやな 水面に音なく 光舞う
のどかやな 水面に残る 魚の影
鳳凰に 糞たれるなり 山がらす
平等院 古代の髪に DNA
胃袋を 貫きおりし 釣りの針
無念やな 炭火の上の 川ざかな
紅(くれない)が 紅(くれない)染めて 秋紅葉雨
荒磯に 舟を浮かべて 時うつる
歓迎会 すぐに出て行き 歓送会
荒海を 見つめて遠き 星あかり
波の音 闇夜に白く 轟々と
コスモスに 風を見つけて 君想ふ
漆黒の 闇立ちのぼるなり 露天の湯
潮風に 身をなぶらせて 露天の湯
寒い冬 それでも見せたい 若い脚
山の上 登りて思う まだ低い
日だまりを 包み込むなり 鐘の音
鐘の音が しみわたるなり 飛鳥京
土俵上 日本人は 行司だけ




